AUTOMATISM / アンドレ・ブルトン

「どんな濾過作業に身をゆだねることなく、私たち自身を、作品のなかにあまたの谺(こだま)をとりいれる無音の集音器に、しかも、それぞれの谺のえがく意匠に心をうばわれたりはしない謙虚な記録装置」

 

AUTOMATISM=自動(記述)法と訳される。

 

厳密には「シュルレアリスム宣言」に「理性によるいっさいの統制なしに、かつ美学的、倫理的ないっさいの先入観なしに行われる思考の真実の書きとり」とあるように、意識下の世界を探求するために用いられる方法。この用語はピカビアのインクのしみとか、紙切れを無造作に落すアルプの方法などのように、意図的に偶然の要素を開発する方法にも適用され、1940年代初期のニューヨークのシュルレアリストたちに重要な原理として引き継がれた。
その後のアクション・ペインティング、アンフォルメル芸術は、どちらも絵をかく過程を自動的な精神の即興、つまり画家の内的な心の状態を表現する手段とみなしていたので、オートマティスムを自らの特質として受け入れた。

オートマティズムは計算されたものは得られにくいが、その有機的形態は自然の法則にかなった結果を生じ、製図機器を用いた幾何学的形態とは対照的に人間味があるプリミティブな表現が見られる。

オートマティズムによる表現は偶然性が強い。だからこそ、コンセプト、その制作意図を明確に持たなければならないと思う。

 

シュルレアリストによる自動記述

第一次世界大戦後、フランスの詩人でダダイストでもあったアンドレ・ブルトンは、ダダと決別して精神分析などを取り入れ、新たな芸術運動を展開しようとした。彼は1924年、「シュルレアリスム宣言」の起草によってシュルレアリスム(超現実主義)を創始したが、彼が宣言前後から行っていた詩作の実験がオートマティスム(自動記述)と呼ばれている。

これは眠りながらの口述や、常軌を逸した高速で文章を書く実験などだった。半ば眠って意識の朦朧とした状態や、内容は二の次で時間内に原稿用紙を単語で埋めるという過酷な状態の中で、美意識や倫理といったような意識が邪魔をしない意外な文章が出来上がった。無意識や意識下の世界を反映して出来上がった文や詩から、自分達の過ごす現実の裏側や内側にあると定義されたより過剰な現実・「超現実」が表現でき、自分達の現実も見直すことができるというものだった。

 

アンドレ・マッソン「オートマティック・ドローイング」(1924年)

 

自動記述は、アンドレ・ブルトンが、第一次世界大戦に従軍時に病院で見た精神分析治療とダダイスムの言語破壊をヒントにして生み出した表現方法。理性の介入なしで言葉を綴っていく記述方式で、無意識下に抑圧されている精神を解放することを目的としている。

1919年にブルトンとフィリップ・スーポーが「文学」誌上にて公開実験作品「磁場」を披露。1933年にブルトンが出版した「オートマティック・メッセージ」が自動記述に関する重要な理論書とみなされている。

 

 

自動記述のやり方は、書く内容をまったく考えずに、ただ思いついたことを次々に書いてゆくのが基本となる。徐々にスピードを上げて書けば書くほど、理性的な介入がなくなり、オートマティスムの効果は高まるという。

オートマティスムを進めていくと、まず文章の主語「私」がなくなり、次に過去形がなくなり現在形が多くなる。動詞は原形になり、名詞のように扱われるようになる。最終的には、名詞と動詞の原型と形容詞だけの世界となり、言葉の前後のつながりが消失し、それはまるでオブジェの陳列の世界になるという。

このようなモノとモノ、概念や概念のつながりが消失していくと、無意識下に抑圧された精神は分かるようになるが、ほとんど狂気の状態になるという。日常生活に支障をきたすようになり、目の前には幻覚が生じ始めるといわれる。

ポイントは、「普通の記述」と「自動記述」は段階的に連続していることである。普通の記述のスピードを上げていくことによって自動記述になり、無秩序で異常な世界が生まれる。この普通と異常の世界の連続性がシュルレアリスムの重要な部分である。現実とは全く別にある幻想世界やファンタジーの世界ではなく、現実の延長にある異常な世界がシュルレアリスム(超現実)である。
(参考文献:シュルレアリスムとは何か 巌谷國士)

 

 

日本に残されている自動筆記

岡本天明による「日月神示」

神典研究家で画家でもあった岡本天明に「国常立尊」(国之常立神)という高級神霊からの神示を自動書記によって記述したとされる書物。昭和19年から27年(昭和23・26年も無し)に一連の神示が降り、6年後の昭和33、34年に補巻とする1巻、さらに2年後に八巻の神示が降りたとされる。昭和33、34年に何かが発生。非公開の神示がこの前後に降りた物なのかは不明。

殆どが漢数字、独特の記号、若干のかな文字が混じった文体で構成され、抽象的な絵のみで書記されている「巻」も有る。本巻38巻と補巻1巻の計39巻が既に発表されているが、他にも、神霊より発表を禁じられていると主張する「巻」が13巻有り、天明はこの未発表のものについて昭和36年に「或る時期が来れば発表を許されるものか、許されないのか、現在の所では不明であります」と語っている。

by wikipedia

 

都市伝説で予言書であると取り上げられることが多いですね。

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