George Herbert : Easter Wings Pattern Poem (1633)
1960年代の国際的な前衛詩運動であるコンクリート・ポエトリーは、言葉の意味を排除し、形式・形態にこだわった詩。
日本では1956年に北園克衛と新国誠一が具体詩宣言を出した。
これが戦後日本におけるコンクリート・ポエトリー運動の始まりとなった。
芸術においてモダニズムの流れが激しくなる中で、詩人も意味内容に専心するのではなく、構造分析を果敢に行うようになった。
その中から言葉の視覚的、音声的な側面を重視した作品に取り組む詩人たちも現れた。
新国誠一はその代表的な作家。
世界的にはコンクリート・ポエトリーの歴史は古く、17世紀にはジョージ・ハーバートによる「春の翼」という作品が発表されている。その後、ステファヌ・マラルメの「賽の一擲」やギヨーム・アポリネールの「カリグラム」、E・E・カミングス、エズラ・パウンドらがコンクリート・ポエトリーの基礎を作っていった。
E・E・カミングスはRADIOHEADのトム・ヨークもリスペクトを公言しています。
eugen gomringer : Wind
しかし1970年代には、コンクリート・ポエトリーの運動は他の美術的要素を取り込んだヴィジュアル・ポエトリーへの展開を見せ、新国のように言語と他の表現を融合することを否定し、あくまで言語の表現としての詩を追求したコンクリティズムは廃れていった。新国の突然の死後、日本の視覚詩やコンクリートポエトリーの運動は終焉を迎え、新国の作品も時代と共になかば忘れられた。デザインや美術の分野で新国の作品が注目されることはあったが、詩として注目されることはなかった。
新國 誠一作品
だが、その図像はタイポグラフィーの観点からは非常に構造的で、美しく、芸術としても非常にコンセプチュアルだ。
また、デザインとしても、その構造やレイアウト、余白の使い方など、大いに学びと得るものがある。
この図像を、デザインではなく、視覚的、音声的に構造分析した「詩」だということに驚嘆する。
書籍(画集)の出版は少ないが、「新国誠一works 1952‐1977」は素晴らしいです。